中国赴任が決まり、空のスーツケースを前に「何を詰めればいいのか」と手が止まっていませんか。数年単位で住むとなると、あれもこれも必要な気がして不安になるものです。私は新卒の現地採用として広州に渡り、6年1ヶ月働きました。そのとき荷物は一切送らず、大きなスーツケース一つだけで渡航しています。中国赴任の持ち物は「量」ではなく、「現地で買えないもの」を見極められるかどうかで決まります。
この記事では、数日〜数週間の出張とは前提がまったく違う、長期滞在のための「物」だけに絞って解説します。ビザ・保険・住民票などの手続きは中国赴任の準備ガイドに、短期出張の方は中国出張の持ち物リストにまとめています。
この記事のポイント
- 中国の都市部では大抵のものが買える。持っていくのは「買えないもの」と「体に合うかが大事なもの」だけ
- 物より先に通信を決める。VPNと日本の番号は、日本にいるうちにしか確実に整えられない
- スーツ・肌着・常備薬・手土産は日本から。日用品と家電は現地で揃える
中国赴任の持ち物が、出張や旅行と決定的に違う理由
- 数年住む前提で「現地調達できないもの」だけを持つ
- 通信環境は、物より先に決める必要がある
- 現地採用として渡ったときに、実際に持っていったもの
数年住む前提で「現地調達できないもの」だけを持つ
中国赴任の荷造りで、最初に手放してほしいのは「向こうには何もないかもしれない」という思い込みです。出張なら数日分を完璧に揃えればいいのですが、数年住むとなると話が変わります。全部を日本から持っていくのは物理的に無理ですし、そもそも必要がありません。
私がいた広州にはイオンがあり、日用品はほぼそこで揃いました。持っていくべきものは、実は驚くほど少なかったのです。これは中国に限った話ではありません。大学時代に台湾へ1年間留学したときも、持ち物はほとんど現地で買いました。台湾は発展途上国ではないので何でも手に入り、しかも日本より安かった。中国の都市部も同じです。
中国は発展途上国ではないので、スーツケースに入れるべきは「日本で買ったほうがいいもの」だけで十分です。
では、何を基準に選ぶか。私は次の3つだと考えています。
- サイズや品質が日本基準でないと困るもの(スーツなど)
- 体に合うかどうかが大事なもの(常備薬・肌着)
- 人間関係に使うもの(日本の手土産)
逆に、洗剤やタオル、調理器具のような「どこで買っても大差ないもの」はスーツケースの場所を取るだけです。なお、内陸の地方都市では日本の商品が手に入りにくくなる傾向があるので、赴任先の規模に応じて「日本から持つ枠」を少し広げて考えてください。
通信環境は、物より先に決める必要がある
中国赴任の準備で一番の落とし穴は、スマホまわりを「物」と同じ感覚で後回しにすることです。物は現地で買い直せますが、通信には日本にいるあいだしか整えられないものがあります。
中国本土のネットワークからは、Google・LINE・YouTubeといった日本で当たり前に使うサービスにそのままでは接続できません。これを越えるにはVPNが必要ですが、VPN事業者のサイト自体が中国からは開けないことが多く、現地に着いてから契約しようとしても手遅れになりがちです。
もう一つが日本の電話番号です。私は2010年に渡航したとき、日本で使っていた携帯を解約して出国しました。当時はそれでも何とかなりましたが、いまは銀行、証券、各種サービスのログインで日本の番号へのSMS認証が当たり前になっています。番号を手放すと、ネットバンキングにすら入れないという事態になりかねません。
通信は「持ち物」ではなく、出発前にしかできない準備だと考えてください。
具体的には、出国の1〜2週間前までに次の3点を済ませておくと安心です。
- 日本の番号を残す回線を決める(低額で維持できるプランへ)
- VPNを契約し、アプリを入れて動作確認まで終える
- 現地SIMが入るSIMフリー端末を用意する
どの端末と回線を選べばいいかは、後半のチェックリストで具体的に整理します。
現地採用として渡ったときに、実際に持っていったもの
私が広州へ渡ったときの荷物は、大きなスーツケース一つだけでした。船便も別送品も使っていません。それで6年の生活が始められたのは、日本から持つべきものがそもそも少なかったからです。
スーツケースの中で「これは日本から持っていって正解だった」と言えるのは、次のものです。
まずスーツです。中国には日本のような紳士服の量販店が少なく、仕立て屋を使うにも言葉と交渉力が要ります。仕事で着るものは日本で揃えておくべきです。
次に肌着です。広州は暑く、肌着の消耗が早い。グンゼのように「いつものこれ」というこだわりがあるなら、多めに持っていくことをおすすめします。
そして手土産です。現地スタッフや総経理への日本のお土産は必須でした。ちょっとした菓子折りで、その後の仕事の回り方が変わります。
振り返ると、台湾留学のときもスーツケース一つで渡り、1年間一度も荷物を追加しませんでした。長く住む場所ほど、荷物は少なくて済むものです。
大きなスーツケース一つあれば、中国での数年の生活は十分に始められます。
出向者であれば会社が引っ越し荷物の輸送を手配してくれるケースも多いでしょう。ただ、送れるからといって家の中身をそのまま送ると、現地の家に合わない家電や使わない日用品が積み上がるだけです。「送れるもの」ではなく「必要なもの」で選んでください。
中国赴任に持っていくものチェックリスト【カテゴリ別】
- 通信・電子機器(スマホ、回線、変換プラグ、VPN)
- 日用品・薬・衣類(現地で買えるもの/買えないもの)
- まとめ
通信・電子機器(スマホ、回線、変換プラグ、VPN)
前半で触れた「出発前にしかできない準備」を、持ち物として落とし込みます。
スマホは、現地SIMが入るSIMフリー端末が前提です。日本の回線と中国の回線を1台で使い分けられるデュアルSIM(eSIM対応)機種なら、端末を2台持ち歩く必要もありません。機種と回線の組み合わせは中国で使うスマホと回線の選び方で詳しく解説しています。
VPNは、日本で契約してアプリを入れ、実際に接続できることまで確認してから出国してください。中国に入ってからでは、契約ページにたどり着けないことが珍しくありません。
\ 日本にいる間の契約が必須! /
変換プラグは「念のため1個」で足ります。中国のコンセントは日本と同じAタイプの差込口が多く、日本のプラグがそのまま刺さることがほとんどです。ただしハの字型の3本ピン(Iタイプ。日本ではOタイプと呼ばれることもあります)や丸ピンのCタイプも混在しているので、マルチ変換プラグを一つ入れておけば困りません。注意すべきは形より電圧です。中国は220Vなので、充電器や電源タップは「100-240V」表記のあるものを選んでください。
VPNとSIMフリー端末、そして日本の番号を残す回線は、日本にいるうちにしか確実に用意できません。
現場のリアル:ドライヤーやヘアアイロンは持っていかない。
日本のドライヤーやヘアアイロンは100V専用のものが多く、中国の220Vにそのまま差すと壊れたり発火したりする恐れがあります。変圧器を持っていくより、現地で安いものを買ったほうが確実で早いです。
最後に日本の番号です。赴任中は日本でデータをほとんど使わないので、使った分だけ払う料金体系の回線と相性がいい。楽天モバイルのRakuten最強プランなら、データ3GBまでは月1,078円(税込)で番号を残せます。さらに海外ローミングで月2GBまで追加料金なしでデータ通信ができ、中国も対象エリアに入っています。一時帰国や日本からの着信、SMS認証の受け皿として、日本の番号を生かしたまま渡る手段として検討してみてください(料金・対象エリアは2026年9月時点。最新情報は公式サイトで確認してください)。
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日用品・薬・衣類(現地で買えるもの/買えないもの)
ここは「買えないもの」と「買えるもの」をはっきり分けると迷いません。
日本から持っていくべきものは次のとおりです。
- スーツ:前述のとおり、量販店が少なく仕立ても難易度が高い
- 肌着:こだわりの銘柄があるなら多めに。南は暑く、北は冬の寒さが厳しいので赴任先の気候に合わせる
- 常備薬:胃腸薬、風邪薬、頭痛薬など、飲み慣れたもの
- 手土産:現地スタッフや取引先向け。着任直後の挨拶で使う分は必ず用意する
薬については、住む土地によって必要なものが変わる点も覚えておいてください。台湾留学時、私が通った大学は山の中にあり、虫刺されの薬が必需品でした。これは半年早く帰国した先輩から譲ってもらったものです。赴任先の気候や環境を調べ、日本でしか買えない薬があれば優先して持っていきましょう。
迷ったら「体に触れるもの・体に入れるもの」だけを日本から持つ、と決めると荷物は一気に減ります。
現場のリアル:薬は「自分で使う分」を「箱ごと」持っていく
中国への医薬品の持ち込みは、個人で使用する合理的な量が前提です。一方で、麻薬・向精神薬の成分を含む薬(睡眠薬や一部の精神安定剤など)は扱いが厳しく、医師の診断書や処方箋の準備が必要になります。漢方薬も成分によっては持ち込めません。薬は外箱や説明書と一緒に持っていき、処方薬は処方箋の写しを添えておくと、税関で聞かれても説明がつきます。制度は変わりやすいので、不安な薬がある場合は出発前に大使館や領事窓口の最新情報を確認してください。
反対に、現地で買えば十分なものは、洗剤・シャンプー・タオル・食器・調理器具、そして家電全般です。家電は現地の220Vに合ったものを買うのが一番安全で、結果的に安く済みます。広州に住む予定の方は、気候や買い物事情を広州赴任の持ち物リストで具体的にまとめています。
まとめ
- 中国の都市部は発展途上国ではない。大抵のものは現地で買える
- 持っていくのは「サイズ・品質が大事なもの」「体に合うかが大事なもの」「人間関係に使うもの」だけ
- 通信は物より先。VPN契約・SIMフリー端末・日本の番号の維持は日本にいるうちに済ませる
- 変換プラグはマルチタイプを1個。電圧は220Vなので、100-240V表記を確認する
- スーツ・肌着・常備薬・手土産は日本から。日用品と家電は現地で揃える
- 私は大きなスーツケース一つで6年の生活を始めた。荷物は少なくていい
持ち物の準備が見えてきたら、次は書類と手続きです。ビザ、住民票、年金、保険など、出国前にやるべきことは中国赴任の準備ガイドにまとめています。スーツケースを閉じる前に、一度目を通しておいてください。
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